INTERACTIVE LIVE SHOW 2022

ZCON

SUSUMU HIRASAWA

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​ストーリー

2つのタイムライン。そして過去と現在をつなぐ亀裂。
優生学的支配を作り出すZCONと脳内に発生する概念の石ZCONITE。

20年前から現在を覗く男は、自分の未来を賭けテンプレと呼ばれる分裂症的姉妹をZCONの支配から解放しようとする。

平行世界に住む天候技師、そして改訂評議会の助けを得てついに現実改訂の奇妙な仕事が始まる。

 

 

歴史上の何処かで人類にはアヨカヨとアンバニと呼ばれる二つの種類があるという考えが生まれました。

アヨカヨとは優れた人間という意味であり、アンバニとは劣った人間という意味です。

これは単に考えであって事実ではありません。

優れた人間を自称するアヨカヨの発明です。

物の道理が分かる人なら、アヨカヨは優れているというより悪賢いだけだと分かるでしょう。

ですが、もうだいぶ前から道理のことなど話す人は変人扱いされています。

歴史を通じてアヨカヨとアンバニの起源を探ることはできません。

歴史は、アヨカヨたちがアンバニたちの日常に生きているという疑似感覚とリアリティーを与えるために単にアヨカヨによって創作されたものだからです。

アヨカヨたちはこうして気の遠くなるような長い間、彼らの表現を借りればアンバニたちの「お世話」をしながら現在のような世界を築いて来ました。

アヨカヨたちにとってアンバニたちは永久に劣っている必要がありました。立場が入れ替わる恐れがあるからです。アンバニたちは完全に制御され、その一生を自覚なくアヨカヨに仕え、ボロボロになって人生を終える時にさえ、それが道理であると考えるよう教育されてきました。アンバニたちはこの世に生を受け、その生命を維持するために自分自身を犠牲にするという反生命的な活動が必須であるということを一つの道理であると教えられました。そしてその苦痛が反生命的であることに気付かせないよう、まるでその苦痛が勤勉という美徳に向けて邁進していることの証であると錯覚させる標語によってその辛い労働は支えられました。その標語とはこうです。

働かざる者食うべからず。

これはある意味で正しく、ある意味でデタラメです。何故ならここで言う働くとは己を殺してアヨカヨに仕える事以外を指さないからです。
このようにしてアヨカヨは長い間、搾取と抑圧で栄華を極めました。

しかし、傲慢な者は重要な事を見落とすものです。元来共存によって繁栄するように設計されている人間集団の原理に組み込まれた自浄作用を見落としていたのです。誰かが誰かを理不尽な力によって搾取し、騙し、抑えつけ、考えを強要し、笑いものにするような反生命的な活動はやがて自浄作用の対象となり、アヨカヨたちは滅びました。これこそ道理というものです。


人間を劣ったままにしておくには、認識、思考、創造力の連結をばらばらに寸断してしまうことです。同時に自らの能力に気付かせないこと。そのためにアヨカヨはアンバニの頭部に概念的な石、ZCONITEを発生させ、ZCONを使ってそれを制御しました。ZCONとは人を「Z」つまり「人たる所以」の終焉状態に導き、そこに留めておくための装置です。まことに都合の良いことに、ZCONITEは伝染もするし、遺伝もするのです。ZCONITEによって起こる精神活動の混乱や停滞を私は単にエラーと呼んでいます。

アヨカヨの自滅によってZCONが停止し、アンバニたちを導くものがなくなった途端、意識の諸機能がバラバラに寸断されているアンバニたちは、多重人格に似た状態に陥りました。このままでは世界は混乱を極め、元来優れていた人たち、つまり、アンバニたちも滅びてしまいかねません。それは私にとってもマズイことなのです。

ここで、アンバニたちが劣った人間ではないことについてお話しましょう。
アヨカヨが優れた人間と劣った人間という分類を発明する遥か前、人々は何処からともなく聞こえるデュンクという旋律を聞いていました。それは物理的に聞こえるというより、心に響くというほうが良いかもしれません。デュンクとは全ての人固有の能力と、思慮深さと、利他的な性質による均衡状態を意味する言葉で、デュンクに対する人々からの応答であるアンという旋律の組み合わせ、デュンク・アンは、幸福で優れた人々の世界そのものを表す旋律で人々を導くBEACONとして認識されていました。人々はデュンク・アンというBEACONに導かれ、それぞれの生命を謳歌していました。

しかしアヨカヨは人々の頭部にZCONITEを生じさせBEACONを聞こえなくしてしまいました。デュンクは聞こえなくなり、応答であるアンの旋律も忘れてしまいました。これで人々はアンバニとして固定されたのです。

21世紀の初頭、アヨカヨはアンバニの永久的な隷属を求めて物理的大破壊を伴う社会工学的現実改訂を頻繁に行いました。その影響で生じたタイムラインの亀裂からじっと現在を覗く男が居ます。彼の名はnGIAP。彼はTLの亀裂から将来アヨカヨが滅びることを目撃しており、ZCONを逆利用してアンバニを解放しなければ自分の未来が無いことを知っていました。アヨカヨが滅びたことも知らず、ひたすらZCONの番人を務めていた男は、亀裂から話しかけるnGiapからZCONがアンバニを不幸にしたことについて教えられました。番人は悔恨の涙と共にZCONの仕組みをnGiapに伝え、ZCONの電源を切ったのです。まだ切るな!というnGiapの叫びも空しく、番人は床に頽れ、そのまま餓死しました。

それ以来nGiapは20年前の世界から、アヨカヨの消滅後に誰かがZCONの電源を入れる日をじっと待っていました。

タイムラインの亀裂からはもう一つ、ZCONの影響を受けなかったほんの少し未来の別のタイムラインに接続できます。nGiapはこのタイムラインの中にZCON操作に必要な天候技師グループと現実の改訂評議会を必要な瞬間より少し過去に戻って編成することができるのです。

アヨカヨが滅びて十数年が経ち、アンバニたちが分裂症状のまま混乱を極めていたある日、テンプレと呼ばれる姉妹、ルビイとシトリンは森の中でZCONを見つけました。テンプレとは、ZCONによって直接制御される対象のことであり、ZCONによってテンプレに生じたことは全ての人に生じます。姉妹が見つけたZCONは古びた小さな小屋のように見えました。
 

to be continued